Somebody To Rag

8割5分くらい自己満足の為の映画紹介。

群衆

題名だけが似ているまったく別のビデオやDVDを借りてしまった、とか皆さん経験ありませんか?
例えば私の友人の失敗談ですが、豪華客船に置き去りにされた赤ん坊が天才ピアニストへと成長していく、なんてロマンティックな物語を期待してレンタルしてきたDVDがいざ再生してみると、深刻なテーマと終始流れる暗鬱な雰囲気、ロマンティックなんて言葉とは遠く対極に位置する残酷なまでのリアリティが彼女を待っていました。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、彼女は「海の上のピアニスト」「戦場のピアニスト」を取り違えてしまったんですね。ちゃんとパッケージ見てたら一発でわかりそうなもんですがどこに目つけてたんでしょうか。

世に発表された数多の作品群の中、まったく被せるなってのは土台無理な話です。そんな中でも特に間違えやすい作品ってのはありますよね。
例えば「真昼の決闘」「白昼の決闘」なんかは両方とも西部劇ですし、それから「紳士同盟」「紳士協定」もこんがらがっちまいそうです。
ん?いや、「踊る大紐育」と「踊る大捜査線」を間違えるやつは流石にいねぇだろ。
ああ、それから・・・




群衆群衆
(2006/12/14)
ゲイリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック 他

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群衆(フランク・キャプラ監督)と群衆(キング・ヴィダー監督)なんか特に間違いやすいから注意が必要ですね。

「雨に唄えば」、「スミス都へ行く」と比較的まともな導入が2回続いたかと思ったらまたこのザマです。
なのに何故かホっとしてる自分に気づいて少し落ち込んできました。

とりあえず今回紹介するのはフランク・キャプラ監督のほうの「群集」です。

経営者が代わった新聞社では一斉解雇が実施され、その中には女流記者のアンもいた。
コラム欄を担当していた彼女は、ジョン・ドゥーという架空の自殺志願者を生み出し、社会や政治への抗議の意味を込めクリスマスイブに市役所から飛び降りるという内容の投書を、彼の名義で新聞に掲載する。
しかしこれが群衆の反響を呼ぶことになった。架空のジョン・ドゥーを客寄せに使い新聞の売れ行きを伸ばそうと企んだ編集長と社長は、失業者たちの中から元野球選手のウィロビーを見出し彼をジョン・ドゥーに仕立て上げる。
彼の写真とともにアンの書く偽の投書が掲載されるたびに新聞は売り上げをグングンと伸ばしていく。そしてそれに比例するかのように、ウィロビーの演じるジョン・ドゥーも瞬く間に群衆のカリスマとして注目を浴び、ラジオ出演が決まる。
アンはラジオ演説の原稿に「隣人を知り、愛そう」という亡き父の抱いた理想を込める。するとそれがまた大反響を呼び、架空の人物「ジョン・ドゥー」に賛同する活動は全米に広まっていく。
そしていつしか、ただジョン・ドゥーを演じていただけのウィロビーも使命感を抱くようになる。
しかし彼の影響力を利用しようと考えた社長は、ジョン・ドゥーを中心とした政党を立ち上げ自分が大統領になることを画策した。しかしそんな企みを知ったウィロビーは社長に反発し、全米に分布するジョン・ドゥーの賛同者が一堂に会する集会で全てを告白しようと決心する。
しかし集会でウィロビーが告白する直前に、「ジョン・ドゥーは偽者だ。追放しよう」と社長が彼を逆に告発する。


前回紹介した「スミス都へ行く」もこのフランク・キャプラ監督の作品ですが、同作品とこの「群衆」には相似点が多く存在します。
わかりやすい点を箇条書きにすると・・・

・両作品とも重要人物の誰かが(スミス〜では主人公のスミスが、群衆では演説の原稿を書いたアンが)母子家庭であり、亡き父の理想や信念が作中で生きる。
・大資本に対し平凡な一市民が立ち向かい、周囲の人間もそれに動かされる社会風刺コメディ。
・ついでにその悪のドンを演じるのが両作品ともエドワード・アーノルドという俳優。


そのほかにも細かなところにスミスの影を感じる作品ですがしかし、この「群衆」にはさらに複雑な要素がテーマとして取り上げられています。
群衆心理です。
最初にジョン・ドゥーを英雄視し祭り上げ、さらには彼の名を冠したクラブまでも作ったのは大衆でした。大勢でウィロビーに面会を求め、ジョン・ドゥーの自殺を止めるための署名活動までも大衆はした。
しかし最後の集会で、社長の手下の人間が彼らの中に紛れてウィロビーに罵声とゴミを投げつけた時、単純な誘導に協和して、英雄視していたジョン・ドゥーを簡単に見限ってしまったのもやはり大衆なのです。
この作品では、簡単に付和雷同し流されてしまう意思の薄い個人と、だからこそ怖い集団心理を取り扱っています。

しかし、このままでは悲しい結末で終わってしまいますがそこはフランク・キャプラです。
最後の最後、最初の偽投書を現実の物とすべく市役所屋上に訪れたウィロビーですが、その自殺を食い止めたのもやはり大衆だったのです。
「酷いことも言ったが、あなたは死ぬべきではない。私たちと一緒にやりなおしましょう」
集まった数人がウィロビーにそう声をかけると、彼の最も近しい理解者が、その場に居合わせた社長に向かい・・・
「これが大衆だ。立ち向かえるか?」
そう一言言ってエンドロール。

原題「Meet John Doe」
これ以上ないほどに作品にマッチした、この「群衆」という邦題をつけた人物に、私は最大級のリスペクトを捧げたい。

テーマ:映画紹介 - ジャンル:映画

  1. 2007/09/23(日) 04:56:25|
  2. 洋画
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